ビジネス向けプレゼン資料の作り方

ビジネス用プレゼン資料を作成するうえでのポイントを、企画・構成・資料作成・その他Tips、それぞれの観点からご説明します。

PPTでプロジェクトマネジメント?

マネージャーの最も重要な仕事の一つ、プロジェクトマネジメント。想定と異なるアウトプットが出てきた、想定したスケジュールで進まない、この二つの「想定外」をどうやって解決してきたかをご紹介します。

 それは、パワーポイントを使ったプロジェクトマネジメント手法です。実際のプロジェクトでどの様に使っていたのかを順にご説明します。コンサルティングファームやITベンダーなど、普段からプロジェクト系の仕事がメインの方たちは、WBSなどの進捗管理手法をいつも使い慣れており、メンバーそれぞれがスケジュールに沿って何をやるべきかをしっかりと理解している方が多いと思います。従い、一般的な会社の方に比べて「想定外」のことが相対的に少ないと思います。

一方で、私の前職(総合商社)もそうでしたが、プロジェクト系の仕事に全く慣れていない会社でプロジェクト系の仕事をする場合、私も含めて、プロジェクトマネージャー(PM)の皆さんはいつもヤキモキしていらっしゃるのではないでしょうか?問題の多くは、①イメージと異なるアウトプットが出てきた、②スケジュール通りにアウトプットが出てこない、この二つではないでしょうか。今回ご紹介する手法を実際に使った「事業投資プロジェクト」を例に、どのようにしてパワーポイントを使ってプロジェクトをマネジメントしたのかをご説明します。

問題①:イメージと異なるアウトプットが出てきてしまう
原因は、メンバーが作業を開始する前に、「プロジェクトの全体像」と、任せたパートでの「最終的に想定している結論」を共有できていないことだと思います。「プロジェクト開始前から最終形なんて、マネージャーですらイメージできないよ」という事もあるかもしれません。もちろん、最初から正しい最終形である必要はありません。ただし、PMであるあなたは、そのプロジェクトの責任者ですので、何かしらの理想形、もう少し柔らかく表現すると、最終的にこういう形でプロジェクトを完了させたいな、というイメージをお持ちのはずです(あるいは、こういう結果に持っていけ、というトップダウンもあるかもしれませんね)。それこそがメンバーと共有すべき全体像です。

その全体像は、多くのパートで構成された一つのまとまりですので、それぞれのパートにもそれぞれの最終形のイメージがあるべきです。例えば事業投資においては、自社の事業戦略、投資対象企業の選定、投資額、契約条件、投資後のアクションプラン、などが大きな構成要素になります。最終形のイメージは、「戦略に沿った今後の成長にはバリューチェーンの拡充が必要。そのためには当社の主戦場の米国において〇〇の機能を保有した企業を買収する。買収価格は〇〇億円で、最低確保すべき契約条件は〇〇権と〇〇権。買収後も経営陣に残ってもらい事業シナジーを実現する」というようなものでした。プロジェクトスタート時から明確なイメージがあることは稀ですし、動き始めてから徐々にイメージが固まってくる要素もあると思います。可能な限りイメージを明確化していく、というのがPMの力量を試される最も重要な能力ではないでしょうか。

では、このイメージをどうやってメンバーと共有するか。そこでパワーポイントの出番です。

 前回の記事で「鉄則① スライドの基本ルール!」「鉄則② スライド構成の肝は構造化」「鉄則③ メッセージを読むだけで伝わるプレゼンにする!」をご紹介しました。PMが活用するのはまさにこれです。プロジェクト開始時に、この鉄則①‐③に沿って、メッセージだけを入れたスライドを作成し印刷します。それを構造化して並び替えます。それをメンバーと一緒に、「プロジェクト完了後にこういう内容をプレゼンすることになる」、という事を確認します。このプロセスを通じ、全体像と、そのイメージがどういうロジックで構成されたものなのかを理解することができますし、ロジックを理解することで、その構成要素をどの様な順番で形にしていけばいいのかを理解しやすくなります。

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イメージを確認した後、構成要素を一つの塊としてメンバーに任せていく、というのが次のプロセスです。イメージを確認した時点で、それぞれの構成要素ごとに最終的にどういう結論を得なければならないのかが共有されています。その構成要素を任されたメンバーをその結論を得るべくそれぞれの作業へと入っていくわけです。この手法は「任せ方」にも大いに役立ちます。メンバーの経験・能力によって任せられる塊の大きさが異なってくるもので、PMはどの大きさでタスクを切り出して任せればいいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。

しかし、ここまでのプロセスで塊の大きさもしっかりと視覚化されていますので、タスクの切り出し方も明確に視覚化されていることになります。経験や能力の高いメンバーにはメッセージとサブメッセージを含む大きな塊で任せ(例えばP2P3P4)、ジュニアメンバーには、大きな塊を担当する先輩社員の下でサブメッセージを形成する塊(例えばP8)を任せる、といった具合です。

その先は、メッセージを”言う”ために必要なコンテンツやファクトを集めたり、社内外の関係者と交渉・説得など、実際のアクションへと進みます。

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問題②:スケジュール通りにプロジェクトが進まない

構成要素を適切な大きさで切り出し、メンバーに任せました。メンバーそれぞれが一生懸命に動いてくれています。それでもスケジュール通りにはなかなか進まないものです。絶対に遅延させない方法は私も存じ上げませんが、少しでも手戻りを減らし、効率よく進める方法をご紹介します。

PMの仕事は、メンバーが集めてくれえるファクトや交渉状況などによってストーリーに変更の必要が出てきていないか、オリジナルストーリーのまま進めていると他の構成要素との間に矛盾が出てきていないか、といった点を特に注意しながら、定期的にメンバー全員でストーリーの確認をします。その際にも上記で使った「印刷と並び替え」をやり、オリジナルメッセージとの比較やメッセージの一貫性の確認をします。定期的に全員で確認しながら進めることで、手戻りがかなり少なくなり、無駄になる作業を減らすことができます。

メッセージをサポートするためのコンテンツの集まりが遅いパートを確認しやすくもなるため、PMはリソースの再配分や自らが入ってサポートすべき部分をより理解しやすくなる、という点でもとても有効な方法です。

 

パワーポイントはプレゼンのための資料で、プレゼンは通常、プロジェクトの最後に実施されます。だからこそ、最後はこういうプレゼンをしたいよね、という事をプロジェクト開始からメンバーと共有するツールとしてもとても有効な方法だと考えています。プレゼン資料に言語化していく事を前提にメンバーが動いてくれることになるため、それぞのアクションがより明確になり、曖昧さを残せなくなり、結果、スケジュールを強く意識しながら進める必要性が出てくるのです。今回は直接的にプレゼン作成に関係する内容ではありませんでしたが、プロジェクトとプレゼン資料は切り離せるものではなく、むしろ使い方によってはとても有効なプロジェクト管理ツールです。PMの皆さん、ぜひ活用されてみてください。

 

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